倒産とは、債務者の決定的な経済的破たんであるというが、経済的破たんにともなって企業に起こる現象は具体的には「支払不能」「債務不履行」である。いわば「仕入代金を払えない」「借りたものを返せない」状態である。この「債務不履行」は民法に違反している状態であるし、それ以前に信用を失う原因であることは誰にも自然に理解できる。
それでは、意図せずしてこのような状況が発生してしまうのはなぜだろうか。
その原因は自由経済市場の不確実性にある。
原則として社会的な財産は、その取引を自由な市場に委ねることにより最適な価格が形成され、最適な価格に基づく取引の結果として、効率的に分配される。古今東西、人類が存在するところに市場が存在したのは、市場を活用することによって、市場がない場合よりもより有利に経済活動を行ない、生活を豊かにすることができたからである。
生産者は、市場において高く買ってもらえる商品を増産すれば、より儲けることができる。消費者は、同じ商品であればなるべく安く買おうとする。その結果、市場で価格が形成される。形成された価格は、市場参加者全体に大きな影響を与えることになる。
ところが、市場はうまく機能しないこともある。これを経済学では市場の失敗という。
たとえばスケールメリットが強烈な企業が競争すると、食い合いの結果1社のみが生き残って他社は退場し、他社が投資した設備や資産は無駄になってしまう。生き残った1社は他社が退場して独占的地位を得たあとに、値上げを行なうかもしれない。そういう懸念があるので、政府は往々にして電力会社や鉄道会社といった業態に対しては、自由競争に委ねずに規制を行なっている。この例に見られるように、市場が失敗するパターンがいくつかある。
そのなかでも、過去のバブル崩壊に見られるような現象がなぜ起こるのかについて多くの経済学者が頭を悩ませてきた。
〔登場者名はすべて仮称〕
(つづく)
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